萩では、古くから鯛や鯵など旬の魚を使った押し鮨が作られていた。萩で生まれ育ち、大の鯛好きだった高杉晋作がよく食べたとされるのが、甘酢漬けにした鯛を押し鮨にした「長州鮨」だ。
萩本陣では、晋作のもう一つの好物長州鮨も味わえる。ほのかに柚子の香りが漂い、鯛の旨味との組み合わせも絶妙だ。
長州鮨は、高杉家独自の呼び名と考えられている。当時供されていた長州鮨は、甘酢漬けの鯛と酢飯を押し型に入れたものだった。高杉晋作が野山獄にいるとき、家族が長州鮨を差し入れした記録が残ることからも保存性に優れる食べ物といえるだろう。
現在、萩本陣で提供されている長州鮨は、昆布締めにした鯛を柚子で香り付けしている。酢飯は大葉とゴマを合わせたもの。鯛と酢飯の両方にしっかり味付けされているので、しょうゆを漬けずにそのまま食べてもおいしい。
昆布の旨味が加わり飴色になった鯛はネットリとした食感。柚子と大葉の爽やかな香りとの相性も抜群だ。複雑な味と香りが口の中で見事に調和し、ついつい口にしたくなるおいしさである。
萩の名物は鯛のあら煮や長州鮨だけではない。萩は、見蘭牛(けんらんぎゅう)というブランド牛がある。
国指定天然記念物である在来牛の見島牛(みしまうし)とホルスタインを交配した見蘭牛は、ほどよくサシが入りとても柔らか。
口に含むと脂の甘味がジュワッと広がり至福の時間を感じられるだろう。
見蘭牛は地元でも入手困難なブランド和牛だが、萩本陣では焼き物として「見蘭牛ロース」を味わうことができる。
萩本陣は、温泉も自慢の宿だ。カルシウムやナトリウムなどミネラルを豊富に含む泉質で美肌の湯としても人気が高い。紅葉の湯と椿の湯は、時間によって男女入れ替えるので、両方の湯が楽しめるのもうれしい。
露天風呂のデザインは、萩城下の石垣や土塀をイメージしたもの。手入れの行き届いた庭園を眺めれば、かつて幕末志士が見た風景をバーチャル体験できるかも。
萩本陣は、部屋の窓から見える景色もすばらしい。昼間は萩城下町の落ち着いた風景が眼下に広がるが、夜になると風景は一転。暗闇の中に街の灯りがきらめく幻想的な眺望となる。
萩本陣は、宿泊施設としては珍しく専用の展望台がある。
萩本陣オリジナルの「SL型シャトルバス」に乗り約8分、標高172mの吾妻山山頂にある「奥萩展望台」は、萩の城下町と日本海の島々を同時に見渡すことができる絶景スポットだ。
360度眺望が楽しめる展望台は、高層の建物が少ない萩城下町でも希少な場所。昼間の城下町も美しいが、夕方になり空が赤く染まる様子は感動の一言に尽きる。
展望台にある足湯につかり、日本海の島々を眺めていると時間が経つのを忘れてしまうほどだ。
歴史の街、萩で多数開催される祭りやイベントの中で、ひと際賑わうのが毎年8月に行われる「萩・日本海大花火大会」である。
花火を打ち上げる台船と会場の距離はわずか300m足らず。夜空に大輪の花を咲かせる尺玉や1000連発打ち上げ花火など、約7,000発もの花火が夜空に舞い上がるたびに歓声が湧く。
会場周辺は毎年大混雑するので、ゆっくりと見たい人には萩本陣の奥萩展望台がお勧め。
萩市街の上空に浮かぶ花火が楽しめる穴場スポットだ。