全国第5位の日本酒の産地である秋田県は、各蔵元が腕を競い合い、極上の日本酒を作り出している。その中でも地元発の「秋田蔵付分離酵母」を使い丹念に仕込んだ日本酒は、蔵元独自の個性が光る銘酒ばかりだ。
「秋田蔵付分離酵母純米酒シリーズ」は、現地に足を運ばないと極めて入手困難なので、ぜひ秋田県に足を運び、蔵元ごとに異なるフルーティな香りとスッキリ爽やかな味わいを堪能したい。
秋田県発の酵母は、AKITA雪国酵母だけでない。秋田県は、古くからの酒蔵が数多く現存する地域。そこで、秋田県は、長年日本酒の仕込みを行っていた酒蔵の壁や柱などに潜む蔵元独自の酵母に着目した。
秋田県総合食品研究センターは蔵元共同で、蔵元独自の「蔵付酵母」を採取、様々な試験を重ねて優良な酵母を選抜、純粋培養し「秋田蔵付分離酵母」として永年の眠りから呼び覚ました。
「秋田蔵付分離酵母」は発見された順番にナンバリングされ、現在 「一番」~「二十五番」まで商品が販売されている。採取した蔵付酵母で醸造された純米酒は、世界中どこにもない「オンリーワン」の逸品として販売されている。
秋田県総合食品研究センターは、日本酒向けの酵母だけでなく、他の加工食品にも活用できる酵母の研究にも力を注ぐ。「秋田美桜酵母」は、秋田県の桜の花びらから分離した酵母だ。
2001年の秋田美桜酵母を使った地ビールの販売開始を発端に、現在は、ワイン、どぶろく、米粉パン、ケーキなど、秋田美桜酵母を使った加工食品が続々と登場している。
秋田県総合食品研究センター発の「あめこうじ」は秋田のオリジナル麹である。秋田県では、しょっつるやいぶりがっこ、ハタハタ寿司など独自の発酵食品が食べられてきた。そこで、同研究センターは、アジア独自の発酵食品を作る麹に着目し「あめこうじ」を誕生させた。
あめこうじを使った加工食品は、日本酒、甘酒をはじめ、パン、菓子など次々に増えている。秋田県生まれの酵母や麹は、秋田県の食品産業の活性化に大きく貢献しているのだ。
秋田県総合食品研究センターが、次々とプロジェクトを成功させる秘訣はどこにあるのだろうか。
渡邉さんは「自分たちの役目は、県内食品産業の活性化に努めることです。そのためには秋田県らしい技術を活かした売れる商品を作ることが任務だと考えてます」と語る。
今後は「世界のいろいろな国の料理と相性が合う日本酒を造りたい」そうだ。
秋田県は、独自の酵母や麹などを生み出すことで新しい価値を創造し、日本酒のブランディングに成功した。
一人ひとりが「より良いものを造りたい」という想いと「秋田県を活性化させたい」という郷土愛。この2つが地方創生を支える源なのだろう。
「NEXT5」は、秋田県内の5つの蔵元の後継者5人が結成したグループ。 「No.6」の新政酒造株式会社、「ゆきの美人」の秋田醸造株式会社、「山本」の山本合名会社、「春霞」の栗林酒造店、「一白水成」の福禄寿酒造株式会社と秋田県を代表する蔵元ばかりだ。
5人は日本酒の普及イベントを行うだけでなく、蔵元独自の技術や情報交換を行い、既存のルールにとらわれない次世代型の酒造りに取り組んでいる。
その一つが1箇所の酒蔵に5人が集まり、酒造りの主要工程を分担し共同で酒を造り上げる共同醸造プロジェクトである。毎年米、水、酵母、麹を替えて仕込む酒は、洗練されたパッケージデザインも大きな魅力。予約だけで完売する人気の品だ。