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History of Hokkaido
アイヌ文化 part.1
提供:白老町

子育て、食育、働き方改革など、現代の日本が抱える問題はアイヌ文化が解決のヒントになる

アイヌの根本的な考え方は「物にはすべて生命がある」ということだ。動植物など人間に恵みを与えるものは、カムイ(神)が姿を変えて人間の世界にいると考え敬っていた。そのため、動物を“過剰に殺生”するのはご法度。

そこで春から秋にかけては食料となる植物を調達し、冬には乾燥させてストックしていたものを食べていた。彼らの食事は、たんぱく質やビタミンなど栄養のバランスがよく塩分控えめ、と健康にもよい食生活だったとみられている。

冬眠中のクマを捕獲するようす
冬眠中のクマを捕獲するようす

また、食べ物や飲料水が手に入りやすい川や海沿いの災害のリスクが少ない場所を選んで、家を建てて集落を作る。食料は、周辺の山や川、海などで入手する。衣食住に渡り、彼らの生活は合理的で無駄がない。現在の日本は、アイヌの歴史や文化から学ぶ点が多いと言えるだろう。

八幡学芸員は「昔のアイヌには学校制度がなく、子どもは集落で育てるものだった」と解説する。子どもは、集落の中で日常的に老若男女と接するうちに自分の社会的立場を自覚し、「どう生きるべきか」を学んでいた。さらに遊びながら、漁狩猟、植物採取、道具の作り方など、生きるために必要な技術を身につけたのである。

(一財)アイヌ民族博物館 学芸課係長・学芸員 八幡巴絵さん
(一財)アイヌ民族博物館
学芸課係長・学芸員
八幡巴絵さん

「子どもの頃から『自分が大人になった時にどうすべきか』を考えていて、自分が成人になったときに次の世代へ同じように伝えるのは、ある意味すごく合理的ですよね」と八幡学芸員は話す。

彼女は、「昔も今も、生きるために必要な情報を多角的に集める力が大切」とアイヌの人達が教えてくれていると感じている。

最近、国内では労働現場で生じる無理、ムダなどを解消するべく「働き方改革」が求められている。一方、アイヌの生活は、あるがままの環境を受け入れ、衣食住と身の周りにあるものを上手に活用し、無理やムダの無い暮らしをしてきた。彼らが続けてきた合理的な生活スタイルから私たちも学ぶべきかもしれない。

海外からの観光客がアイヌ文化に興味を持つ理由

(一財)アイヌ民族博物館は、以前から課外学習や修学旅行などの団体が中心だったが、インバウンドにより数年前から訪日観光客も増加している。最近では、韓国、タイ、シンガポールからの観光客が多い。外国人からはアイヌの儀式や狩猟、さらに死生観など踏み込んだ内容の質問を受けることが多いそうだ。

ヌサ(祭壇)でのカムイ(神)への祈りのようす
ヌサ(祭壇)でのカムイ(神)への祈りのようす

八幡学芸員は「外国の方は宗教的歴史観があるので、他文化を理解しようと興味を持つ人が多いみたいです」と話す。

また、日本では博物館というと敷居が高いというイメージを持つ人が少なくないが、外国人にとっては比較的身近な存在であるようだ。八幡学芸員も「博物館はとてもおもしろいところなので、もっと気軽に来てほしいですね」と思っている。ここは、歴史や文化を学ぶ場でもあるが、道具や日用品の機能美を鑑賞し、踊りや儀式などライブ感も体感できるエンタテイメント空間なのだ。

数多くのアイヌに関するコンテンツが展示されている (一財)アイヌ民族博物館
数多くのアイヌに関するコンテンツが展示されている
(一財)アイヌ民族博物館

アイヌ文化の歴史を一度に理解しようとするのは困難だ。まずは、一度博物館に足を運んで「きれい」「かっこいい」などと心に残るコトや物を見つけ、そこから自分の興味関心を広げると、さらにアイヌへの理解が広がるだろう。

なお、アイヌ民族博物館は2018年3月31日で閉館する。閉館前に足を運ぶのが賢明だ。

2020年、白老ポロト湖畔にアイヌ文化復興等のナショナルセンター「民族共生象徴空間」が誕生

2020年4月24日、北海道・白老町のポロト湖畔に、アイヌの歴史・文化を伝える情報発信拠点「民族共生象徴空間」が誕生する。広大な敷地内には「国立アイヌ民族博物館」「国立民族共生公園」などの施設が建ち、アイヌの世界観や自然観などを体感できる。

国立アイヌ民族博物館 完成イメージ(1)提供:文化庁
国立アイヌ民族博物館
完成イメージ①
提供:文化庁
国立アイヌ民族博物館 完成イメージ(2)提供:文化庁
国立アイヌ民族博物館
完成イメージ②
提供:文化庁
国立アイヌ民族博物館・基本展示室 提供:文化庁
国立アイヌ民族博物館・基本展示室
提供:文化庁

単なる学習の場でなく、子どもから大人まで世代を問わず楽しめるエンタテイメント的要素も満載だ。野外スペースのチキサニ広場では、伝統的な衣装や踊りで来園者を歓迎してくれる。常設の体験交流ホールは、舞踊や音楽などの公演が披露され、「顔の見える交流」ができる場だ。

国立民族共生公園 体験交流ホール外観完成イメージ
国立民族共生公園
体験交流ホール外観完成イメージ
国立民族共生公園 体験交流ホール内観イメージ
国立民族共生公園
体験交流ホール内観イメージ
国立民族共生公園 チキサニ広場完成イメージ
国立民族共生公園
チキサニ広場完成イメージ

(上記3点) 提供:北海道開発局

また、広大な敷地を利用して伝統的コタンも再現され、狩猟・漁労、伝統的儀式、チセ(建築)など、かつてアイヌの生活の様子も知ることができる。工房では、木彫、刺繍・織物などの実演や体験スペースが設けられ、双方向での交流も行う予定だ。

これらの施設の中核となるのが、北海道初の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」だ。新施設には現在開館中の一般財団法人アイヌ民族博物館の収蔵品が移管され、現在働いている人たちも、引き続き管理運営に携わることになっている。

目標来場者数は年間100万人、このうち40から60万人は外国人観光客を想定している。

現在は、施設オープンのプロモーション動画などの広報活動、道内外でアイヌ文化の実演体験ができるイベントの開催など、道内外でのPRに余念がない。

アイヌ文化は、衰退の一途を辿った時代もあった。しかし、先住民が継承し続けた文化の希少性と魅力に気づいた人々が保存活動を行ううちに、インバウンドなど観光資源としての価値が見出されてきた。現在は、北海道の地域創生や地元経済活性化の担い手としての期待も高まっている。

2018/1/25 Neojapan
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