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焼酎王国かごしま①
鹿児島で酒といえば芋焼酎

五感を満たす鹿児島産の本格焼酎

およそ100年前に森鴎外の短編小説「藤棚」に登場した「嗜好品(しこうひん)」という言葉。一般的には風味や味、摂取時の心身の高揚感など、味覚や臭覚を楽しむための食品・飲料のことを示すが、時として人との出会いや意思疎通を円滑にするコミュニケーション・ツールの役割を果たす。 鹿児島が誇る嗜好品のひとつ「本格焼酎」の魅力を、「五感」というキーワードで考えてみたい。

1970年代から始まった焼酎ブームの歴史

お茶、コーヒー、たばこと並ぶ四大嗜好品のひとつである「酒」。なかでも本格焼酎は、長い間、九州を中心とする地域のみで飲まれていたが、明治期になって大衆化し、さらに1970年代の焼酎ブームにより全国に広まった。

1980年代の第二次焼酎ブームでは、焼酎を炭酸などで割った「チューハイ」が大衆に浸透した。これにより、焼酎といえば安価でアルコール度数が高く、果汁やお茶などで割って飲むものというイメージが定着。一方、2003年頃からの第三次焼酎ブームでは、風味豊かな本格焼酎(乙類焼酎)が好んで飲まれるようになった。

焼酎ブームと本格焼酎の出荷量推移(国税庁統計)
焼酎ブームと本格焼酎の
出荷量推移(国税庁統計)

“芋”焼酎発祥の地「鹿児島」

鹿児島県酒造組合会長濵田酒造代表取締役社長濵田雄一郎さん
鹿児島県酒造組合会長
濵田酒造 代表取締役社長
濵田雄一郎さん

日本酒の蔵数で全国一を誇る新潟県にある酒蔵は約90。これに対して、鹿児島県にある焼酎蔵は114。鹿児島が焼酎王国といわれる由縁である。

「焼酎はもともと、薩摩などの九州だけで飲まれていたお酒です。それが1970年頃に、モータリゼーションの発展とともに全国に広がっていきました」。そう語るのは、鹿児島県酒造組合の会長で、濵田酒造 代表取締役社長でもある濵田雄一郎さんだ。

鹿児島では清酒造りも行われていたが、温暖な気候ゆえに品質の高い酒が期待できなかったため、清酒造りの過程で得られる「もろみ」を加熱して造る焼酎が定着した。1700年頃にさつまいもが沖縄から鹿児島に伝わると、さつまいも栽培の広がりとともに、芋焼酎も造られるようになる。当時は、味噌や醤油と同じように焼酎も家庭で造るものだった。

本格焼酎の進化と広がり

そもそも焼酎は、どのような酒か。簡単にいえば、原料と水から造る「蒸留酒」のことを指す。穀物や果実などをアルコール発酵させたものを「醸造酒」といい、ビールや日本酒がこれに該当するが、蒸留酒はこの醸造酒を加熱し、純度の高いアルコールを抽出したもの。洋酒でいえば、ウイスキーやブランデーの仲間だ。

醸造酒と蒸留酒の原料や種類
醸造酒と蒸留酒の原料や種類

もうひとつ知っておきたいのは、酒税法上の甲類・乙類の区分だ。麹に水と酵母、主原料となる米や芋、麦などの穀物を加え、アルコール発酵させ「もろみ」を造る。これを蒸留するのが焼酎の造り方だが、どのような蒸留過程を経るかで甲類・乙類が分かれる。

甲類と乙類の焼酎の製造方法の違い
甲類と乙類の焼酎の製造方法の違い

甲類焼酎は、連続式蒸留機で蒸留を繰り返して造ったアルコール度数36%未満のものを指す。明治期に生まれた新しい製法だ。一方の乙類は、単式蒸留機と呼ばれる蒸留機で一度だけ蒸留した、アルコール度数45%以下のもの。日本の伝統的な製法だ。

甲類焼酎は純度の高さと無味無臭が持ち味で、チューハイなどにして楽しむ。乙類焼酎はアルコール分の高さと、原料の風味をダイレクトに感じられる個性が特徴。乙類焼酎のなかでも、芋・麦・米・蕎麦・黒糖・シソなど自然の原料で造られたものを特に「本格焼酎」と呼ぶ。その魅力は原料の多彩さにある。

鹿児島の芋焼酎の原料に使われている芋は黄金千貫(こがねせんがん)が主流だが、ジョイホワイト、紅さつま、安納芋、金時芋などさまざまな品種が開発され、芋の個性を生かした焼酎が造られてきた。今より、百年程昔、明治大正期に多くの人に愛されていた芋「蔓無源氏(つるなしげんぢ)」を復刻させて造った焼酎もある。

多くの焼酎に使用される黄金千貫
多くの焼酎に
使用される
黄金千貫
年前の芋蔓無源氏
百年昔の芋
蔓無源氏
百年前の芋を原料にした本格焼酎 蔓無源氏
百年昔の芋を原料にした
本格焼酎 蔓無源氏(国分酒造)

もうひとつの原料である麹(こうじ)も時代に応じて変化してきた。かつては清酒と同じ黄麹が使われていたが、扱いが難しいため、明治後半からは泡盛で使われる黒麹が使われるように。さらに大正時代、まろやかな風味の焼酎ができる白麹が発見され、後に主流となった。2003年頃に起きた第三次焼酎ブームでは、黒麹が再びブレイクした。

現在主流の白麹展示「杜氏の里 笠沙」
現在主流の白麹
展示「杜氏の里 笠沙」

さらに、ここ10年で焼酎は大きな進化を遂げていると濵田さんはいう。「焼酎ブームによって商品が売れた。焼酎メーカーはそのお金で研究開発をして、さらに品質のいい焼酎をつくる。この好循環ができています。焼酎は海外の方からも注目されるようになってきました」

麹やさつま芋の種類を変えて、製造方法を工夫して、味や風味、香りの独自性を創出してきたのが、鹿児島の芋焼酎(本格焼酎)の歴史だ。だからこそ、飲む人の五感を満たす「嗜好品」と成り得ているのだろう。鹿児島には2,000を超える本格焼酎の銘柄があるといわれているが、その一部を紹介していこう。

鹿児島県庁に飾られた鹿児島産の芋焼酎
鹿児島県庁エントランスホールに飾られた
鹿児島産の本格焼酎

鹿児島県酒造組合の取り組み

鹿児島県酒造組合では、鹿児島産焼酎を国内外に広めるためにさまざまな取り組みを行っている。

例えば毎年11月1日の「本格焼酎の日」から3日間は、県内蔵元の焼酎を集めたイベント「焼酎ストリート」を鹿児島市の天文館で開催。500円で好きな焼酎が5杯飲めるお得さに、大勢の来場者を集めている。また、東京や大阪、福岡などでも焼酎の試飲会やイベントを随時開催している。

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海外でのPRにも力を入れる。2018年には、英国ロンドンにある世界最大のワイン&スピリッツ専門家養成機関WSET(ダブルエスイーティー)を訪れ、本格焼酎の魅力を伝えるセミナーを開催した。

2019/7/1 Neojapan
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