キャビアというと、ロシア産を思い浮かべる人が多いかもしれないが、近年は国内各地でもキャビアの生産が行われている。その中でも宮崎県はキャビアの生産量が日本一だ。
宮崎県は、日本で初めてチョウザメの養殖を始めたところである。1983年、旧ソ連から漁業技術協力の感謝の証として日本に贈られたチョウザメを、宮崎県水産試験場小林分場(現・内水面支場)が受け入れたことがきっかけとなった。
当時、国内ではチョウザメ養殖の前例がなかった。エサの種類や飼育環境などすべてが手探り状態で、徹夜で魚たちの様子を観察することも少なくなかった。試行錯誤の結果、2004年に日本で初めて完全養殖成功の快挙を遂げる。宮崎県は、チョウザメ養殖を本格的な産業にするため驚きの行動に出る。事業参入に応募してきた県内企業や団体に、長年の研究で培ってきた技術やノウハウを無償で惜しみなく提供したのだ。
宮崎県は、現在も官民一体となってキャビア生産とチョウザメ養殖振興を行う唯一の県だ。大量生産を前提としつつ、独自の加工技術も確立した。クリーンルームでの加工、通常のキャビアの数倍にものぼる長期間熟成。 加工の細かい工程でも手間暇を惜しまない。クリーンルームではピンセットを使って不純物を一つ一つ取り除くなど、すべての作業は人間の手で丁寧に行われる。素材の味を活かすために塩分は控えめだ。防腐剤など余計なものは一切加えず、低温殺菌(パスチャライズ)を行なわないフレッシュキャビアとしてキャビア本来のうまみを引き出した。
後発の宮崎県産キャビアを多くの人に認めてもらうためには、とにかくこれまでに類を見ないキャビアつくるというポリシーで取り組んだ結果、「これなら市場でも受け入れられる」と確信を持てる極上のキャビアを生産できるようになり、2013年に満を持して宮崎県産キャビア「MIYAZAKI CAVIAR 1983」を販売開始した。市場の反響は予想を超えるほど大好評で、発売開始直後から売り切れ続出。現在では、生産量も増加し安定した供給が可能となっている。
また、品質の評価も高く、2016年3月には「MIYAZAKI CAVIAR 1983」がANAファーストクラスの機内食に、さらに5月に開催されたG7伊勢志摩サミットで採用され、首脳たちの舌を魅了した。
日本の三大珍味といえば、ウニ、カラスミ、このわたの3つだ。しかし、ここに「宮崎県産キャビア」が加わり、日本の四大珍味と呼ばれる日も遠くないかもしれない。