宮崎県は、畜産が農業産出額の約6割を占めている。宮崎牛、みやざき地頭鶏、宮崎ブランドポークといずれも日本屈指のブランド肉だ。宮崎県は黒毛和牛の名産地であるが、「宮崎牛」を名乗ることを許されるのはごく一部の最上級の肉牛のみだ。
宮崎牛は豊潤で奥深い味わいとあふれるほどの肉汁が特長。その品質の高さは、国内外でも揺るぎない評価を確立している。その代表格が、和牛のオリンピックと称される「全国和牛能力共進会」で史上初の2連覇という快挙を達成したことだろう。全国和牛能力共進会とは、5年に1度開催される和牛の品評会。全国の和牛の名産地から厳選された牛が集結する。宮崎県は、日本の中でも最高峰の和牛の生産地であるが、ここにたどり着くのは決して平坦な道のりではなかった。
2010年4月、宮崎県内に口蹄疫が発生した。ウイルス感染の可能性があると殺処分の対象となった牛は69,454頭と、当時宮崎県で飼育していた牛の22%にのぼる。多くの種雄牛も殺処分の対象となった。さらに風評被害の影響で1,000軒を超える肉牛農家が廃業に追い込まれ、宮崎牛の存続さえ危ぶまれる状態に陥った。それからわずか2年後の2012年、宮崎牛は2回連続の日本一に輝いたのだ。
宮崎牛存続の危機からわずか2年で、再び日本一の称号を手にした原動力は、「よりよいものを作るために決して妥協をしない」という精神。そして、防疫体制の整備や畜産経営再開への手厚いサポートなど宮崎県と畜産業界が一丸となって、宮崎牛存続の危機を乗り越えようとした。口蹄疫という想定外のアクシデントは、全国に先駆けて一層の衛生管理の安全配慮につながり、宮崎牛のさらなる品質向上と信頼回復へと導いたのだ。